知っていましたか?
非事業用資産を事業用資産へ転用した場合、所得税法上減価償却費として必要経費に計上できるんです。

個人事業主の場合、自家用で使用していた車を営業車として使用したり、自宅を事務所として使用したりというようなケースは多いと思います。

このような場合に、減価償却費を必要経費として計上することで、所得税の金額が安くなります。

そもそも、減価償却費って何ですか?

事業で使っている自己所有の建物(事務所など)や車などの減価償却資産は、収入を得るために必要な財産ですから、使用によって価値が減少(減価)した部分を必要経費として計上することができます。この、価値の減少分が減価償却費といわれるものです。

それでは、実際にいくら減価償却費として計上することができるのでしょうか。

例えば、240万円で購入した車を今年1年間使ったとしましょう。車の価値はいくら減少したと思います?

10万円?50万円?100万円?・・・う~ん、悩んじゃいますよね。

償却資産の価値の減少部分を具体的に把握するのはとても難しいのです。そのため、減価償却費の計算方法については法律で個別具体的に決められているんです。

したがって、決められた方法で計算すれば必要経費として認めてもらえるのです。

所得税はどのくらい安くなるの?

必要経費に計上した減価償却費の金額×所得税率が所得税の減額分と考えます。

ケースバイケースになりますが、例えば上記のように、昨年240万円で購入した車を今年の4月から事業用に使用したとしましょう。

車の法定耐用年数は6年ですので、6年間にわたって減価すると考えます。事業で9か月使用しているため、今年必要経費に算入できる額は約30万円となります。

そして、節約できる所得税は約61,260円となります。

240万×0.167(償却率)×9か月÷12か月=300,600円

300,000円(千円未満切捨)×20.42%=61,260円

※車は事業用途のみで使用、償却方法は定額法、所得税率は20.42%と仮定しています。

減価償却資産の取得価額や取得時期、資産の種類や所得の金額によって所得税が減額される金額も異なってきます。

所得税率は人によってさまざま

所得税率は、超過累進税率というものを採用しています。

簡単に言うと、所得が低い人は低い税率、所得が高い人は高い税率が適用されます。

平成30年4月1日現在での所得税率は下記のようになっています。

課税所得の金額 税率
195万円以下 5%
195万円超 330万円以下 10%
330万円超 695万円以下 20%
695万円超 900万円以下 23%
900万円超 1,800万円以下 33%
1,800万円超 4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

上記に加え、平成49年までの各年においては、所得税に対して2.1%の復興特別所得税が課せられます。

以上のように、所得金額によって税率が異なるため、必要経費に算入した減価償却費による節税効果は各所得区分に応じて異なることとなります。

税率が高い人ほど、必要経費に算入した減価償却費による節税効果が高くなるのです。

 

減価償却資産の種類

減価償却資産については、所得税法施行令第6条において減価償却資産の範囲として規定されています。

代表的なものを挙げてみます。

・建物
・建物付属設備(冷暖房設備、照明設備、痛風設備、昇降機その他建物に付属する設備)
・構築物(ドック、橋、岸壁、桟橋、軌道、貯水池、坑道、煙突その他土地に定着する土木設備又は工作物)
・機械及び装置
・船舶
・航空機
・車両
・運搬具
・工具、器具、備品(観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供する生物含む)
・牛、馬、豚、綿羊及びやぎ
・かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、梨樹、桃樹など

生き物も減価償却資産に含まれるんですね……。

ただし、土地など使用しても価値が減少しないと考えられるものは減価償却資産の対象外となりますのでご注意を。

法定耐用年数

法定耐用年数は、減価償却資産の種類ごとに決められており、減価償却費を計算する基礎となる耐用年数のことです。

耐用年数というのは、「取得してからこの位の年数までは使用できるよね」という、言い換えれば資産の賞味期限みたいなものです。

減価償却資産ごとに賞味期限が法律で決められているので、賞味期限が切れるまでの間で資産の価値を減らしてくださいねというものです。

上述の車も普通自動車は6年、軽自動車は4年と決められています。また、一般用の車、運送事業用や貸自動車業・自動車教習所用の車によっても耐用年数は異なります。

このように、資産の種類や用途ごとに法定耐用年数が定められています。法定耐用年数を誤って適用してしまうと、減価償却費の金額も間違えてしまいます。

判断を要するようなものは、専門家に相談してくださいね。

余談ですが、私が監査していた企業でも、耐用年数を誤って適用していたケースもあります。大企業でも耐用年数の適用を誤ることもありますから、専門家への相談は本当におすすめします。

定額法と定率法

減価償却費の計算方法には、定額法と定率法というものがあります。

資産の取得時期によっては旧定額法、旧定率法を使う場合もありますが、近年取得した資産については定額法と定率法が主となるため、定額法と定率法についてお話します。

定額法

定額法とは、その名の通り毎年決まった金額(定額)を減価償却費とする方法です。

資産の取得価額に法定耐用年数に関する省令で定められた償却率を乗じることで計算ができます。

240万円で購入した車を耐用年数6年で、定額法で費用計上する場合を例にしてみましょう。

年間の減価償却費は約40万円となります。

約40万円=240万円×0.167(償却率)

例えば、年度の途中で取得した場合では取得年度では下記のようになりますが、それ以後の期間では同額が計算されます。
4月に購入し、4月中に使用開始したケース
1年目:240万円×0.167×9か月÷12か月=300,600円

2年目~:240万円×0.167=400,800円

ポイント
定額法は、資産の「取得価額」×償却率で計算するので、基本的に毎年同じ減価償却費が算定されます。

定率法

定率法は、資産の未償却残高に償却率を乗じて計算する方法です。

未償却残高とは、資産の残りの価値です。すなわち、減価償却による価値の下落分を差し引いたあとの資産価値ということです。

例えば、240万円の車を定額法で償却した場合の1年度末における未償却残高は、償却費40万円を差し引いた200万円となります。

200万円=240万円-240万円×0.167(償却率)

2年度末における未償却残高は160万円となります。

160万円=200万円(1年度末未償却残高)-240万円×0.167(償却率)

定率法の場合、未償却残高に償却率を乗じて減価償却費を計算するため、初年度の減価償却費が一番高額になり、年度が経過するごとに減価償却費の金額が少なくなっていきます。

下記事例でみてみましょう。

240万円の車を法定耐用年数6年の定率法で減価償却を行います。

1年目:240万円×0.333(償却率)=799,200円

2年目:(240万円-799,200円)×0.333(償却率)=533,066円

1年目の減価償却費は、定額法の倍近い約80万円という結果が出ました。しかし、2年目の減価償却費は定額法に比べて低い金額となりました。

このように、定率法は初年度の減価償却費が一番高額になり、年度が経過するごとに減価償却費の金額が少なくなっていきます。

ポイント
定率法は、「未償却残高」×償却率で計算する。
初年度費用が一番高額になり、年の経過とともに費用計上額が少なくなる。

定率法を採用する場合で、非事業用資産を事業用資産へ転用した場合、転用時点の未償却残高の算定が通常の減価償却方法とは異なりますので、ご注意ください。(定額法についても未償却残高の算定には留意が必要です。)

定率法は3月15日までに届け出が必要

減価償却費の計算方法は、届け出をしないと定額法が適用されます。

定率法を採用したい場合は、その旨の届け出が3月15日までに必要です。

また、H28年4月1日以後取得の、建物・建物付属設備及び構築物については定額法のみの適用となります。

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